僕自身あまり機材にこだわり(って言ったら語弊があるけど)がある方じゃないんですが、音作りの悩みの質問をされる事が増えたので、現時点でどう考えてるか残しておきたいと思います。
先に書いておきますが「Ampegの場合はイコライジングをどうする」といった旨の記事ではないので悪しからず。
大前提として楽器の演奏のクオリティを上げる
元も子もない事言うとこれが全てと言っても過言ではない。まじで。
手元のコントロール、楽器を鳴らす習熟度を上げるのが音を良くする一番の近道、というか唯一の方法です。
エレキベースはライブだろうがレコーディングだろうが、D.I.を使ってコンソールに直で信号を送ることになるので、
余計なノイズや不要な弦が鳴ってる=雑音がスピーカーからお客さんの耳にダイレクトで届く
事になります。
どんだけ良いコンプやリミッターを使おうが、プリアンプやD.I.にいくら拘ろうが、最終的に誰かの耳に届く音が全てで、機材にこだわる前に演奏者自身のスキルを上げるのが何より重要だということは改めて言わせてください。
この意識があった上で、ライブではどうアプローチしているのか僕が思っていることを書いていきます。
どんな楽器がいるか、メンバーがきちんとモニターできているか
まず初めに、アンサンブルにどういう楽器がいてどの程度まで音量が上げれるか、それに伴う低音のマワリ又はハウリングを気にしなければいけないかを考えます。
アコースティックの楽器は何人いてベースアンプからどういう位置関係にいるのか。
例えばアコギはマイキングなのかピックアップで拾うのか、シンセ やサンプラーやシーケンサーの音がモニターからどのくらい出せるのかetc…
自分だけ気持ちよく弾ければそれで良い!
っていうのであれば低音をガッツリ出して爆音で鳴らしたいところですが、残念ながらよっぽどのベースヒーローかルーパーでソロパフォーマンスするアーティストではない限り、他のメンバーも気持ちよく演奏できるように配慮するのが「グルーヴを預けてもらえるベーシスト」になるスキルの一つだと思っています。
モニターから出る音量のMaxよりデカい音で鳴らしてしまえば、ライン出力のみの楽器が聞こえなくなりますし、自分のベースがハウリングしていないからと言って、アコースティック楽器が共振してしまうほどの音量を出せば、他の楽器のコントロールの邪魔になります。
空間に対して低音と音量の飽和量を考える
めっちゃカッコつけて書いてるけど、「50Hzを何db削って」とか全部の楽器やマイクに対して計算して考えているかというと、そういうわけではありません。
空間に対して「これ以上ベースを出したらアンサンブル全体が飽和するな」というイメージを持つようにしています。
音は空気の振動で、その場にある空気の容積に対して過負荷をかけると逆に振動し辛くなっていくイメージ。
ベースの音は柔らかく、質量も体積も大きいのでそもそもが空間を埋めやすい楽器だ、というイメージ。
お客さんにどう届いている(聴こえている)か
記事の一番初めに「D.I.からスピーカーまで直」という話をしましたが、ステージでのベースアンプをどう扱ってるかについても書きたいと思います。
ベースアンプは基本、自分とバンドメンバーのモニターとしての役割として考えています。
(ロックやポップスではどうしてもドラムに負けない音量まで上げる必要があったり場面次第。)
ステージが狭く(アンプまで十分な距離が取れない)かつ高さがあるライブハウスなんかだと、ベースアンプのキャビネットスピーカーの高さの都合上、自分たちよりダイレクトにお客さんにステージ上のアンプの音がPAシステムのスピーカーに勝って聞こえてしまう場合もあるので、自分のアンプの音がどこに向かって飛んでるのかも意識します。
箱のキャパや音楽のスタイルにもよりますが、基本的にはアンプからの生音よりもPAシステムから出る音の方が、安定した(立ち位置で変化が少なく、聞く側にとって楽しみやすい)音になるので、ステージ上の音のフロアへの干渉は少なければ少ないほど基本的にはベターでしょう。
おそらく300人規模のキャパシティー以下であれば、日本のいわゆる「ライブハウス」に置いてあるようなベースアンプ+キャビネットはオーバースペックになる場合が多く、基本的にはマスターボリュームを極力絞ったり低音を削るようなセッティング傾向に必然と僕はなっています。
PAさんとの関係の築き方:リハーサル時にフロアに出てバランスを聞くのはあり?
PAさんとの関係性もありますが、個人的には確認程度の認識です。
リハーサル時にフロアに直接降りて音を聞いてバンドのセッティングを変えたり、バランスのオーダーを出すと言ったことはしません。
というのも、お客さんがフロアに入った状態は、誰もいないリハーサル時のそれとは全く違う状況で(単純に「人が増える=空気振動の障害物」になるので)、状況に合わせてバランスをとってくれる(しかもハコの特性を把握している)スペシャリストがいるのであれば、基本的に信頼を置いて預けた方が良い結果が出やすいかと思ってますし、経験上もそっちの方がいい結果を得られる事がほとんどです。
ただ、外音の回り込みの音は常に聞くようにしていて、(フロアにいるお客さんのノリ方も加味してだけれど)フロアまで含めた空間を俯瞰してみた時に、バンドの中音だけではなくライブ会場全体でグルーヴのポケットにはまった演奏を提供できているか、の判断材料にしています。
D.I.について
上にも書いたように、外音は基本的にお任せすると言った思考なので、積極的な音作りの一環としてD.I.を利用することはあまりないです。(レコーディングは別)
もちろんD.I.自体にもサウンドの傾向があるんですが、持ち込む場面があってもオペレーターさんに「扱いやすい音」として預けるための選択肢、ぐらいの認識です。
自分の演奏を届けるための装置の通過点の一つだと思っていて、D.I.も拘って自分のサウンドイメージの一環としている、という考え方ではないです。
(矛盾するように聞こえるかもしれませんが、会場全体で鳴っている音が把握しやすい機種=抜けが良く聞こえる機種は確かにあるので、プレイヤビリティを上げると言った意味ではD.I.を持ち込むことはありだと思います。)
PA環境がない(不十分な)場所での演奏
小規模な飲食店などで演奏する場合、PAスピーカーがベースを鳴らすには小さすぎたり、そもそもPAシステムがなかったりっていう状況は割と出会します。
ベースはアンプからの生音をメインとして演奏することになるんですが、お店の音響特性によってはアンプの設置場所によって大きくサウンドが変わるので、キャビネットの向きや壁からの距離などある程度自分で調整する必要があります。
この時も、「音の飽和感」や反響音などを考えて(感じて)セッティングしています。
まとめ
以上が僕のライブにあたってのサウンドメイクの考え方です。
まずは大前提として演奏の技術力を上げること(ミュート、タッチノイズを減らすなど)、ベース本体より先の部分は不確定要素なので囚われすぎない事が根幹になってます。
具体的な機材の使い方ではありませんが、どういうアプローチをするか明確な基準を自分に近い部分で完結するように考えておくと、弾き方を変えたりして場に合った柔軟性を身につけられるので、参考になれば幸いです。
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